お彼岸の連休にクラッチ調整のために山形からやってきました

【初めて見ました!DUCATI125Sportに萌える~】

お彼岸の連休に山形からクラッチ調整のためにDUCATI125Sportがやってきました。

100GSマリアンナはボローニャの博物館で実物を見てきましたが、125Sportは初めて見る1台でした。

こういう貴重な機会はなかなか無いだろうと思い、お声掛けしたところ何人かのドカオーナーさんたちがギャラリーとして来てくれました。(お手伝いありがとうございました)

オーナーさんのワゴンに収まっていた125Sportを見た我々初老のおっさん達はあまりのかわゆすさに萌え度100%を既に振り切っています。(笑)

確かに車体は小さめとは言え、前後17インチホイールってどうなんだろう?と思ってましたが、あの細いH型リムや小さいけれど細かい細工が丁寧になされたハブの造りなど、まさに美術工芸品です!

写真より現物の方が何倍もかわゆすです。見た瞬間から完全にノックアウトです(笑)

エンジン右側はこんな感じです。この中を小さいべベルギアがぐるぐる回ってるなんて、もうたまらん!(笑)

【激重どころか鬼重だったクラッチ(涙)】

ナローケース(250及び350)はワイドケース(250&350)と同じクラッチスプリングを使っています。基本構造もほぼ一緒です。

唯一違うのがロッドを押してるクラッチアームの長さで、ピボットからの長さを比べてみると(ピボットからロッド押しまでの長さとピボットからワイヤー部分までの長さの比率)ワイドケースの方が1.6倍ほど大きくなっています。

そんな理由でナローケースのクラッチは最初っから重いのですが、125系も160Monzaジュニアとかと同じ構造なのでかなり重いんだろうなあ~と予想はしておりました。

それでも必殺クラッチの「正中心力を練磨する」ことによって改善はかなりできるんじゃないかと踏んでいたわけです。(クラッチの「正中心力を練磨する」調整方法については下記ページをご覧ください)

シフターカバーをはずしたところ。クラッチアームはナローケースと同じタイプが使われています。

いつまでもニヤニヤしてないで作業に入ります(笑)まずはリフトに上げて状況を確認します。

クラッチを握ってみますと、この125Sportの前に整備していた450の激重クラッチよりもあきらかに思い鬼重クラッチでした。(涙)

では整備を始めましょう。まずシフターカバーをはずし、念のためクラッチロッド(長・短)ボールを抜き出し、これらには極圧用グリースを塗布して組み直しておきます。

このグリスアップはなぜするかと言うと、年明け早々に自分の450Mark3desmoのクラッチを開けた時にボールにこすれたような変形が見られたからです。ロッドの通るミッションシャフトの内部にはオイルが回るようにはなっているのですが、もしかすると潤滑が足らなくなるのかもしれません。それでできる限りの対策を施しておいた方がいいと考えるからです。

次にエンジン左側のプライマリーカバーにある楕円形のクラッチインスペクションカバーをはずします。

このカバーは大きな半丸皿ビス2個で留っていますが、このビス頭のマイナス溝がビンテージ感を醸し出すのに一役買っています。後年、Pantah系にまで使われていましたが現在では入手が難しくなっています。無くなさいように注意します。

まず、プレッシャープレート真ん中にあるロックナットを緩めます。そしてアジャスターボルトを回せるようにしておきます。

次に切れ始め(ロッドの押し始め)の時に右側ロッド(短)とアームが直交する角度になるようにアジャスターボルトを回して調整します。

【調整した結果は、、、、。】

普通、この調整をすると劇的に改善される場合が多いのです。この車両の前に調整した450の激重クラッチは天国とは言いませんが、普通のクラッチになりました!

ところが今回は少し軽くなった程度でやっぱり重いのは変わりません。

せっかく2時間半もかけて来ていただいたのに大して改善されないままお帰りいただくわけにはいきません。これでは私の名前が廃れます。(そんなご立派なものではございませんが、、、。笑)

次にコントロール系に手をかけていきましょう。

クラッチワイヤーには必殺極圧潤滑剤のベルハンマーを注入します。

そして遊びがあってグラグラしていたクラッチレバーはレバーブレードをはずしてホルダー部分にピボットのネジを取付け、それを締めてやってブレードの嵌る部分の幅を少し小さくしてやります。(スチール製の場合)これで走行中のバタつきも無くなるはずです。ここにも極圧系用グリスを塗って組立てます。

クラッチレバーの動きはしっとりとしたいい感じです。

さてクラッチワイヤーを取りつけてみましょう。

あれっ?、なんかダイレクト感が増してしまい、逆にクラッチの重さがモロに感じられてしまいます(涙)

がーん、ショック!

そうとなればやれる事を全てやるのみです。

自宅に戻ってワイヤー作成キットを取ってきます。

125の場合、レバーに嵌るタイコ部分もすこし小さいんですね。

昔、買っておいたバーネットの英車用タイコセットの中に合うのがありました。

はんだポットの電源を入れ、半田づけの準備をします。

ポット内の半田が溶けたところでワイヤーの先端を広げたタイコ部分にフラックスを浸けてはんだポットに潜します。じゅぶ~という音がして完成です。半田の盛りが足らない時は、そこにフラックスを再度浸けてはんだポットにちょん漬けすればOKです。

また反対側(クラッチアーム側)はネジ式タイコで留めますので、ここはワイヤーの先がほどけないようにフラックスを浸けてはんだポットに潜して固めておきます。

はんだ付けしたタイコからはみ出たワイヤーはニッパで切り落として、サンダーで成形すれば完成です。レバーに嵌る部分が少し浅く、レバーからワイヤーの出てくる位置とタイコの位置が合わなかったのですが、これもサンダーで削って調整してお終いです。こういう作業もやればやるほど上手になりますね!

インナーワイヤーにはまたもや必殺極圧系用グリスを塗り、アウターに入れていきます。そしてレバーに嵌め、反対側をクラッチアームにネジ式タイコで留めます。

「これでどやねん!?」

はい、操作感はよりダイレクトになりましたが、重さはちぃっとも変わりません。やはりワイヤーには問題は無かったようです。(涙)

「どうすんだべ?」と途方に暮れそうになりましたが、2時も廻ってしまいましたので一旦ここでお昼ご飯にします。

近所の大洋軒さんでお気に入りの「焼き肉丼+ラーメンセット」を食べてエネルギーチャージです。(すみません、ごちそうしていただきありがとうございました。感謝です。)

飯を喰いながらも必死で対策を考えます。

「片道2時間半かけて来ていただき、お土産までいただいて、その上お昼ご飯もごちそうしてもらって何にもできなかったらただのバカ野郎でしょうが!?」と心の中はものすごい葛藤と焦りが渦巻いてました。

【いい方法があるじゃん!名付けて逆プリロード作戦!】

ふっふっふ。ついにピンときましたよ!

名付けて「逆プリロード作戦!」

私の初号機450はなぜかクラッチスプリングを留めているビス(M5x12)の下にスプリングワッシャーが挟まってました。6本すべてです。

スプリングワッシャーは本来緩み止めですから、その用途であればスプリングの上のワッシャーの上に付いてなくてはいけません。それがワッシャーの下にあるんです。

30年近く前に初めて見た時は「なんじゃこれ?」とばかりにはずしてしまいましたが、どうもスプリングのプリロードを弱めるためのものだったらしいです。

であれば125のクラッチスプリングだってプリロードを弱めることはできるはずです。

飯を食い終わって「秘密の倉庫2017」に戻り、ストックしてあったねじ箱の中をあさってみます。ちょうどいいサイズのスプリングワッシャーがありました。

厚みも1.5ミリほどあります。これを組み込みましょう。

クラッチドラムの高さが低いのがわかるでしょうか?

クラッチをばらしてみてわかりました。やはりスプリングは250&350と同じものが使われています。

またスプリングカップも250&350、450と同じものですね。

違うのはフリクションプレートとプレインプレート(スチール)が1枚ずつ少なくなっています。

もともとのパワーが小さい上にプレートは少ない。その上スプリングは強めなのにプリロードもきつめ。これでは鬼重なのも納得です。

スプリングワッシャーをはめ込んでからクラッチレバーを握ってみると、、、、。

今度は3割くらい軽くなった感じがします。

オーナーさんにも確認していただき、プライマリーカバーを取り付けることにします。

が、しかし、、、。

最近、うちに来るマシンは本来ガスケットが入るところに液ガス(液体ガスケット)が使われている場合が多くなってきました。ちょっと前まではガスケットも手に入りにくかったので仕方がないのかもしれませんが、なるべくなら使ってほしくありません。

ぼやいても作業が進むわけではありませんので、スクレーパーで液ガスのカスを落としていきます。クランクケース側とプライマリーカバー側の合わせ面がきれいになったところでペーパーガスケットを入れて組んでいきます。

ペーパーガスケットは少し赤っぽい色をしてるのですが、これがほんの少し合わせ面からはみ出ます。そのはみ出た感じがよりヴィンテージ感を増すと思うのは私だけでしょうか?

こんなちっちゃなフライホイールもちゃんと「DUCATIなんたら」のロゴが入っていてイチイチ萌えちゃいます(笑)

最後にリフトの上に手を伸ばして記念の1枚。まさに奇跡の1枚となりましたが、点滴タンク吊り下げ用のゴムバンドが入っていたのは大きな誤算でした(涙)

無事、125Sportのクラッチ整備は完了いたしました。

思いのほか時間がかかってしまいましたが、オーナーさんには喜んでいただけたようでホッとしました。

これからもかわいがってあげてくださいね。

【ここからが今回の話の本番かも~→驚愕の事実が判明!】

さて話はこれでは終わりません。(笑)

なんとなく125用のクラッチスプリングが250&350と同じものが使われているのは予想してましたが、あそこまで重たくなるとは思ってもみませんでした。

また450用が900用と共通なのは知ってましたが、今一つ解せない部分もあったので詳しく調べてみました。

そしたらなんと驚愕の事実が!!!!

今回の125に使われていたスプリングは160や250、350にも使われているのですが、それがなんとラウンドケース750(750SSイモラレプリカや750S、750GTも)や860、そして1978年の900SSまで使われていたことがわりました。がーん!(部品番号は040016550)

なら同じスプリングを125に使えば重いの当り前です。本数だって同じですし、シングルは同じスプリングカップを使っていますので、プリロード設定は同じ可能性が大です。

またクラッチアームは、ナロー→ワイド→べベルツインと時代を追うごとに長くなっていきます。

一番小さい125が一番重くなる設定だったなんて!Oh Mio Dioですね。(イタリア語版OMG)

ちなみに450用は部品番号が048016550で1979年~80年の900SSに始まり、それ以降の900MHRに使われていたようです。またべベルツイン用の強化タイプとして部品番号79916550というのもあったようです。

このデータからわかるようにシングル用のクラッチスプリングはもともと強すぎるのかもしれません。

もし調整しても重くて仕方がないというのであれば、スペーサーを入れてプリロードを弱めにしてみてください。どのくらいが適正なのかは自動車工学とかを勉強すればわかるのでしょうか?でも今の私には皆目見当がつきませんが、あとはテストをしながら滑らず、また重すぎずというところを探っていただければと思います。

以上、ながながと書きましたが、とてもかわゆすなDUCATI125Sportとの時間は甘美なものとなりました。

すばらしい経験をありがとうございます。


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