【ワイドケース後期型350、450の電装パーツです(CDI点火)】

さて、今回はDUCATIシングルはなぜ6vだったか、12V化のメリットは何があるかについて考察をしてみました。少しお付き合いください。

電子式レギュレーターの登場

電子式のレギュレーターはワイドケースの発表と共に採用されました。

ですので1968年か1969年の登場です。

その頃、私はアマチュア無線とかラジオ製作に夢中で、専門誌を買って読んだり、カーステレオをばらしたり、そんなことばかりしておりました。(小学校高学年)

まだゲルマニュームトランジスターが全盛で、シリコン製は精製が難しいということで高値の花の時代です。それにまだ真空管も使われておりました。もちろんレギュレーター内で整流器に使われる大容量のシリコンダイオードなんて高い高い、そんな時代です。(正式にはレギュレーターは電圧制御装置です。整流器(交流を直流に変換する)はレクチファイヤと言います)

1970年の大阪万博が終わった頃からでしょうか、IC(集積回路)というものが出始め、その頃から電子部品が小型化していったのです。

この流れを見ていくと、DUCATIエレットロニカ社も60年代後半にはレギュレーターを電子化し、70年代初頭には独自のCDI点火システムを提供し始めたというのも時代的には合致すると思います。(その前はセレン整流器+電磁石式のレギュレーター。セレンも半導体の一種です)

それと当時はバッテリーのコストも高かった。今と違ってアジア製のものはありませんでしたからバッテリーを買い換えるというと高かった記憶しかありません。(涙)

そんな訳で6V電装を選択したのはコスト面が大きかったのではないかと推測できます。その後12vが一般化した80年代初めには350Ventoなどのモトトランス系シングルは12v化されています。(350Stradaはセル付きのモデルもありました。その理由も大きいのかもしれません)

12v化のメリットとは

では、12v化のメリットとはどんなものがあるのでしょうか?

同じ60wを発電する場合、6vの場合は10A流れます。(6Vx10A=60w)

12vの場合は5Aで済むのです。(12Vx5A=60w)

バイクの電装はフレームアースやらコネクターの腐食やら電気抵抗になる部分も多いので、バッテリーから末端までの電気抵抗が1.5Ωあると仮定しましょう。

そうすると、6Vの場合は6V=1.5Ωx4A となり、12Vの場合は12V=1.5Ωx8A となります。(昔習ったオームの法則というものですね)

つまり、6Vの場合は電気抵抗の影響をもろにかぶって4Aしか流せなくなり(6Vx4A=24w)逆に12Vの場合は8Aまで流せるので(12Vx8A=96w)電気容量的には余裕があるのがわかります。

実際、一般の家庭で使われている電気も発電所では何万ボルトかの高電圧で発電されています。そして途中の変電所や電柱の上のトランス(最近は地中に埋められていますが)によって100Vの低圧にまで落とされています。

去年の今頃、新潟から函館に向けて国道7号線をひた走りましたが、国道といえど山の中では街灯もかなり離れた間隔でしかありません。月明かりも無く真っ暗な山道を6V25wの豆電球を点けながら走るのは怖いだけでした。LEDライトを持ってくればよかった!と心の中で叫んだのは1回や2回ではありません。万が一コケちゃったら朝日が出るまでそこでじっとしてるつもりで走ってました。(笑い)

たかがバイクの電装かもしれませんが、発電容量に余裕があることほど安心できるものはありません。

それだけではありません。バッテリー点火の場合、6vコイルは1.8Ω、12vコイルは3.2Ωくらいの抵抗値ですが、計算してみると6vコイルでは3.3A流れます。12Vコイルは3.75A流れる計算です。電流的にはほぼ同じでも電力として考えると、6Vコイルは6Vx3.3A=19.8w、12Vコイルは12Vx3.75A=45wとパワー的には倍以上の点火エネルギーを供給できる事になります。

ということは同じバッテリー点火の点火システムであったとしても12V化することで始動性やトルク感の向上が期待できるということです。今はASウオタニさんのSP2パワーコイルキットなどもありますので点火系に関しては最近のバイクと遜色の無いレベルまで持っていけるのかもしれません。(ちょっと言いすぎかもしれませんが>笑い)

さて、そんなメリットの多い12V化ですが、実際にやろうとするとなかなか大変です。次回は12V化の方法についていくつか考えてみたいと思います。

ご覧いただきありがとうございました。

ご参考にしていただければ嬉しいです。


※純正タイプの点火系パーツ(ポイント、コンデンサー、IGNコイル、トランスデューサー、ピックアップコイル等)の入手も可能です。

詳しくは下記リンク先ページの「車体系・外装系・電装系・特殊工具その他」を見ていただくか、9.電装系リスト(PDF)をダウンロードしてください。

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