DUCATIシングルで使われていたCDI点火システムにはDUCATIエレクトロテクニカ製とスペインのモトプラット社製の2種類があります。
モトプラはスペイン製ということで信頼性が低いイメージがあるかもしれませんが、伊ビレリ社などのレーシングカートで使われていた事もあり、私にとっては強い火花を飛ばす点火システムという認識の方が強いんです。
そのモトプラCDIの火が飛ばないということでご連絡をいただき、様子を見にお伺いしてきました。
配線を確認しましたが、どうもCDI点火システムのアース回路がおかしくなっていたようで、IGNスイッチがONでもOFFでもアースに落ちています。そこで一旦アースへの回路を切り離し、プラグをエンジンに接触させキックをするとバッチリ火は飛びます。でもスパークがどうしてもよわよわなんです。これではエンジンがかかる感じがしません。
原因としては、オルタネーターからの電力が足らないか、それともCDIユニット(IGNコイルと一体になったトランスデューサー)がダメになったか、それとも、、、、、。
次回、お預かり後バラして確認及び対策を行いますが、現状で考えられる原因を考察してみました。
写真は以前、別のシングルからはずしたモトプラCDI用ステーターコイルです。
右側が焼けているのがわかるでしょうか?この部分がCDIユニットへの給電コイルになりますが、これでは発電ができなくても仕方がありませんね。
放熱用の銅板がつけられている事からもかなり熱を持つのがわかります
またDUCATIエレクトロ製ステーターコイルもモトプラと同じようにCDIユニットへの給電コイルには放熱用の銅板が付けられています。
DUCATIエレ製もモトプラ製も給電コイル(言い方は違うかと思いますが)は細い銅線がたくさん巻かれており、充電用コイルに比べたら高めの電圧が発生するのがわかります。
オシロスコープで電圧とその波形を見ると、モトプラの場合はマイナス48Vが給電されているとの事でした。(メカトロの専門家談)このマイナス48VがCDI点火のためのエネルギーとなりますので、これがよわよわでは飛ぶ火も飛べなくなりますね。(涙)
あとステーターコイル廻りで懸念されるのが、コイルからの配線の被覆の傷みです。
モトプラのいいところは配線に錫メッキ線を使っているので、DUCATIエレのようにただの銅線のように腐食しない(緑色に錆びない)というのがあります。
しかし、残念ながらビニール被覆部分は熱とオイルによる経年変化でボロボロになっている場合が多く(これ以外にも350Ventoを2個ほどバラしましたが、いずれもボロボロでした>涙)銅線に付着したオイルは電気抵抗にもなりえるので、配線部分は耐熱・耐油のコードで張り替えた方が安心です。
張り替える場合は、錫メッキ線をパーツクリーナーで脱脂し、その表面をサンドペーパーでさらってやり、その後ハンダ付けしてやれば大丈夫です。あとは熱収縮チューブで覆って、両端をシーラントすればなお良しでしょう。
なかなか手間のかかる作業かもしれませんが、電気は目に見えませんし、ステーターコイル廻りはクランクケースカバー内に隠れてしまいますので、念には念を入れておいた方がトラブル回避のためにもいいと思います。
ご覧いただきありがとうございました。
ご参考にしていただければ嬉しいです。
※純正タイプの点火系パーツ(ポイント、コンデンサー、IGNコイル、トランスデューサー、ピックアップコイル等)の入手も可能です。
詳しくは下記リンク先ページの「車体系・外装系・電装系・特殊工具その他」を見ていただくか、9.電装系リスト(PDF)をダウンロードしてください。